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親の介護と仕事の両立|40代・50代が知るべき制度と転職

親の介護と仕事の両立|40代・50代が知るべき制度と転職

「仕事を辞めるしかない」と思う前に、知ってほしいこと

ある日、実家から電話が入る。親が転んで動けなくなった、認知症の診断が出た、退院後は誰かの手がいる。40代・50代になると、こうした連絡は他人事ではなくなります。仕事は責任のある立場、子どもの教育費もかかる。そんなタイミングで介護が重なると、頭をよぎるのは「会社を辞めて面倒を見るしかないのか」という考えです。

総務省の令和4年就業構造基本調査では、介護を理由に仕事を辞めた人は年間およそ10万人。働きながら介護をする「ビジネスケアラー」は約365万人と推計されています。決して特別な状況ではありません。だからこそ国も制度を整えてきました。勢いで辞表を出す前に、使える仕組みを知っておくと、選べる道は思っているより多く残っています。

まず駆け込む場所|地域包括支援センター

介護が始まったとき、最初に頼るべき場所は会社でも病院でもありません。地域包括支援センターです。

ここは市区町村が設置している、高齢者の暮らしを支える総合相談窓口です。保健師やケアマネジャー、社会福祉士が常駐していて、介護保険の申請の進め方、利用できるサービス、施設の情報まで無料で相談に乗ってくれます。親が住む地域のセンターが担当になるので、遠方に住んでいてもまずは電話一本かけてみる。それだけで、何から手をつければいいかの地図が手に入ります。

介護保険サービスを使うには「要介護認定」が必要です。申請してから認定が出るまで一か月ほどかかることもあるので、早めに動くほど後が楽になります。認定の区分によって使えるサービスの量が変わるため、ケアマネジャーと相談しながら、デイサービスやヘルパー、ショートステイを組み合わせていきます。これらをうまく回せば、自分一人で抱え込む量は大きく減らせます。介護は「自分が全部やる」前提を捨てて、プロと制度に分担してもらうところから始まります。遠距離介護なら、なおさら現地のサービスを早く立ち上げておくことが、自分の仕事を守ることに直結します。

介護休業|93日・3回に分けて使える

仕事を続けながら介護の体制を整えるために、法律で保障されているのが介護休業です。誤解されがちですが、これは「自分が付きっきりで介護する期間」ではありません。介護サービスの手続きをしたり、施設を探したり、家族で役割分担を決めたりするための、体制づくりの時間です。

育児・介護休業法では、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。ここが大事なところで、93日を一度に使い切る必要はありません。入院した直後にまず数週間、退院して在宅介護の段取りを組むときにもう一度、容体が変わったときにさらに一度、というように、山場に合わせて小分けにできます。

正社員だけの制度でもありません。パートや契約社員といった有期雇用でも、一定の要件を満たせば取得できます。「うちは対象外だろう」と自己判断で諦めず、まず会社の人事に確認してください。申し出は会社に対して行う必要があるので、早めに相談しておくとスムーズです。

介護休業を3回に分割して山場ごとに使えることを示すタイムラインの図

介護休業給付金と介護休暇のお金まわり

「休んだら収入がゼロになる」という不安が、辞める方向に背中を押してしまうことがあります。ここも制度で支えられています。

雇用保険に入っていて要件を満たす場合、介護休業の期間中は介護休業給付金が受け取れます。金額は休業開始時の賃金日額のおよそ67%。つまり、休んでいる間も給料の約3分の2が補われる計算です。手続きはハローワークで行い、会社を通して申請するのが一般的です。給付金があると知っているだけで、休業のハードルはぐっと下がります。

通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせなど、単発の用事に使えるのが介護休暇です。対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで、1日単位はもちろん時間単位でも取れます。年次有給休暇とは別枠なので、有休を温存しながら使えるのが利点です。2025年4月の法改正で、これまであった「勤続6か月未満は除外できる」という仕組みが廃止され、入社して間もない人でも使えるようになりました。介護休業の長期と、介護休暇の単発。この二つを場面で使い分けるのが両立の基本形です。

2025年4月の法改正で会社の義務が増えた

知らないと損をするのが、2025年4月に施行された育児・介護休業法の改正です。介護離職を防ぐ目的で、会社側にいくつかの義務が新しく課されました。

まず、従業員が「家族の介護に直面した」と申し出たとき、会社は介護休業や両立支援制度について個別に説明し、利用するかどうかの意向を確認しなければならなくなりました。さらに、介護に直面する前、おおむね40歳の段階で、制度に関する情報を早めに提供することも義務づけられています。研修や相談窓口の整備も求められるようになりました。

働き方の面では、介護をする従業員がテレワークを選べるよう配慮することが、会社の努力義務になりました。出社が前提だと介護との両立は一気に難しくなりますが、在宅で働ける余地があれば続けられる人は増えます。これらは「会社がやってくれたらラッキー」ではなく、法律上の義務や努力義務です。制度の存在を知らされていなければ、こちらから人事に「介護で両立支援を使いたい」と切り出して大丈夫。むしろ、それが想定された形になっています。

地域包括支援センター・介護休業・介護休暇・給付金など使える制度の全体像を表した図

それでも両立がきついとき|働き方を変える転職

制度をフルに使っても、いまの職場ではどうしても回らないことがあります。残業前提の文化、出社必須、急な早退が許されない空気。そうした環境では、本人がどれだけ頑張っても限界がきます。

このとき、辞めて無職になるのではなく、両立しやすい働き方へ移るという選択肢があります。テレワーク中心の会社、フレックスや時短に理解のある職場、実家の近くで通勤時間を短くできる勤務地。介護と並走できる条件を軸に職場を選び直すわけです。40代・50代の転職は経験を評価される場面も増えていて、即戦力としての需要は確かにあります。市場の実態は40代の転職は本当に難しいのか|現実とデータで確認できます。

気をつけたいのは、焦って収入を大きく落とさないことです。介護にはお金もかかります。年収をどう守るかは40代・50代で年収を維持する転職の考え方を一度読んでおくと、条件の優先順位を冷静につけられます。年齢への不安が先に立つなら、40代の転職で「年齢の壁」を超えた人の共通点もあわせて目を通してみてください。在職中のまま、両立できる求人を探し始めるのが安全な進め方です。

介護離職を「最後の手段」にするために

介護で会社を辞めると、生活費の不安に加えて、介護が終わったあとの再就職という重い課題が残ります。だからこそ、離職は最後の手段にしたい。

幸い、手元には使える札が何枚もあります。地域包括支援センターでプロに相談し、介護休業を山場に合わせて分割して使い、給付金で収入を補い、介護休暇で単発の用事をこなす。2025年からは会社の支援義務も強まりました。それでも今の職場が合わないなら、両立できる働き方へ移る道もある。

一人で全部背負おうとしないこと。これが、仕事も親も自分も守るいちばんの近道です。まずは親が住む地域のセンターに、一本電話をかけるところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 介護休業はどれくらい休めますか?
対象家族1人につき通算93日まで取得できます。3回まで分割できるので、入院直後、退院後の在宅準備、容体の変化など、山場に合わせて小分けに使えます。一度に使い切る必要はありません。

Q2. 介護休業中の収入はどうなりますか?
雇用保険の被保険者で要件を満たせば、介護休業給付金として休業開始時の賃金日額の約67%が支給されます。手続きはハローワークで、会社を通して申請するのが一般的です。給料のおよそ3分の2が補われる計算です。

Q3. 介護休暇と介護休業はどう違いますか?
介護休業は体制づくりのための長期の休み(通算93日・3回分割)です。介護休暇は通院の付き添いなど単発の用事に使う休みで、対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日まで、時間単位でも取れます。有給休暇とは別枠です。

Q4. パートや契約社員でも介護休業は使えますか?
一定の要件を満たせば有期雇用でも取得できます。「自分は対象外」と思い込まず、まず会社の人事に確認してください。2025年4月の改正で介護休暇の勤続6か月未満除外の仕組みも廃止され、使える人の範囲は広がっています。

Q5. まず誰に相談すればいいですか?
親が住む地域の地域包括支援センターです。介護保険の申請やサービスの組み立て、施設情報まで無料で相談できます。会社には両立支援制度を使いたい旨を人事に伝えましょう。2025年からは会社側にも制度の周知・意向確認の義務があります。